今週水曜日からパシフィコ横浜で開催されるゲーム開発者会議「CEDEC」ですが、今年もゲームグラフィックスの未来を語るパネルディスカッションを執り行うことになりました。昨年までは2コマやっていたのですが、本業の取材が出来なくなるほど負荷が高かったので今年は1コマです。
日時は水曜日の17:50~18:50。場所は基調講演なども行われるメインホールになります。
西川善司の「CEDEC 2013」ゲーム開発マニアックス(グラフィックス編)
http://cedec.cesa.or.jp/2013/program/ENG/6483.html
今回のテーマは、PS4,Xbox One時代のゲームグラフィックスで重要になると思われる4テーマについて議論する予定です。
その4テーマとは「キャラクタレンダリング」「テッセレーションステージ」「GPGPU」「大局照明」です。本エントリーの最後にトークテーマのあらましを記載しておきます。この通りになるかは本番になってみないと分かりませんが。
さて、お招きするパネリストの方々ですが、上記写真のメンツになりました。
毎年、パネリストのブッキングは自分で行っているわけですが、これが本当に大変です。ただ、その苦労の甲斐あって今年も例年通り豪華ですよ。
まず、バンダイナムコゲームス(BNG)からは高橋誠史氏です。高橋さんは、現在、BNGのゲームエンジンNU3Gのグラフィックス技術開発を担当されています。NU3Gといえば、今度発売される
「ジョジョの奇妙な冒険:オールスターバトル」でも採用されているエンジンです。また、
高橋さんのブログは、グラフィックスエンジニアの間でも人気のサイトとなっています。
スクウェアエニックスからは同社の新世代ゲームエンジン「Luminous Studio」のリードプログラマの岩崎浩氏です。セガ時代はソニックエンジンの開発にも携わり、日本でもトップレベルのゲームエンジンアーキテクトの1人です。岩﨑さんは昨年にも登壇頂き、かなり鋭い視点の意見をたくさん頂いたことから、今年も再登場して頂きます。
AMDからは原田隆宏氏。HAVOK時代は物理シミュレーションの専門家で、AMDに移籍してからはGPGPUの専門家として活躍し、昨年までは物理シミュレーションのパネルディスカッション登壇頂きましたが、最近はグラフィックス方面の開発を担当しています。トゥームレイダーの毛髪レンダリングに採用されたTressFXや、PS4,Xbox Oneでの採用が進むとみられる新世代のレンダリングメソッド「Forward+」法の開発にも従事されています。
ソニー・コンピュータエンタテインメントからは山口太氏です。なんと、未発売のPS4専用タイトル「KNACK」のグラフィックスプログラマーに登壇頂けることになりました。ご存じのようにPS4はCPUとGPUが融合したAPUベースのプロセッサを搭載しています。開発もかなり後期になっているはずで、山口さんにはかなり実践的なお話が聞けると踏んでおります。
最後は「TOY STORY」等でお馴染みのピクサーから手島孝人氏です。手島さんは16ビットパソコン時代のCG黎明期からグラフィックス技術を磨いておられた方ですが、今やオールラウンダーのエンジニアとして活躍されています。ポリフォニーデジタルで「グランツーリスモ」シリーズの開発に従事していましたが、現在はピクサーに在籍。
ピクサーのOpenSubdivプロジェクトにてリアルタイム向けの技術開発を行っています。
手島さん出演のビデオを見ていない人は今すぐ確認を!
一応、下に、トークテーマの暫定プログラムを記しておきます。
当日は、
ニコニコ動画でリアルタイム中継もされるようです。
■キャラクタレンダリング
GDC2013ではACIVISION/BLIZZARDのJorge Jimenez氏の次世代キャラクタレンダリング技術のセッションが注目を集めた。
人肌、顔面の動き…どれもリアルタイムを想定してここまでできる、という目安を示したセッションであった。
スクウェアエニックスのAGNI'S PHILOSOPHYでも同種のアプローチが見られるが、次世代ゲームグラフィックスではどこまでやればいいのか、その目安を探る。
■テッセレーションステージ
いまひとつ応用が進まなかったDirectX11世代GPUで使えるようになったテッセレーションステージだが、2012年8月にテッセレーション技術の関連特許を広く抑えていたピクサーがこれを放棄。さらにOpenSubdivプロジェクトを立ち上げるなど、追い風が吹いてきた。カプコンのPanta Rheiエンジンは、テッセレーションステージをディープに活用するコンテンツパイプラインを構築しているという。このトークテーマでは、ピクサーのエンジニアの方に最新のリアルタイムサブディビジョンサーフェースの実装経験を話して頂き、その内容に基づいてどこまで使うべきかの仮の結論を導き出す。
■GPGPU
PS4は、グラフィックスレンダリングとGPGPUの同時並列実行が可能であることが明らかになった。
ジオメトリシェーダとGPGPUを応用してパーティクルシステムをGPU内で完結させるGPUパーティクルシステムは、全ての新世代ゲームエンジンで実装済みであり、今後はさらなる応用が期待される。
しかし、一方で、HAVOKはPS4向けの物理シミュレーションエンジンはCPUベースで実装するという方針を明らかにしている。
「なにをどこまでGPGPUでできるのか」…その具体的なボーダーラインを探る。
■大局照明
Unreal Engine4が、事前計算不要の完全リアルタイム大局照明(GI)技術である「Sparse Voxel Octree-Global Illumination」(SVO-GI)技術を2012年に発表し業界を震撼させた。一方で、今でも主流のGI実装法は、シーンを適当に分割してその各所におけるGI情報を事前計算して3Dテクスチャに焼き込む手法だったりする。
結局、次世代ゲームグラフィックスでは、SVO-GIのような新世代技術は実用化されるのか、それとも今までのままなのか…、各エンジンでの取り組みを伺い落としどころを探る。
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