久々の3Dゲームグラフィックス講座は「メタルギアソリッド4」(MGS4)です。
ボリュームが大きくなったので前後編でお届けすることになりました。
コナミは日本のゲームメーカーとしては老舗ですし大手ですので、どちらかといえば閉鎖的なイメージがあったのですが、今年はCEDECでも複数セッションで情報開示を行いましたし、イメージが変わりつつあります。
今回の取材においても非常に協力的で正直驚きました。記事中の画面ショットも、その多くが新規で取っていただけたものなのです。
(取材対応してくれたコナミ佐藤さん、小島プロダクションの是角さん、高部さんありがとうございました)
こうした「ゲーム技術の情報開示は何の意味があるのか」という議論はあるのですが、日本の業界全体として世界に対する競争力を付けるためにも意味があると思っています。
「我々はここまでやっている」というアピールは開発当事者達には誇りになりますし、同業関係者は「アソコがそこまでやっているならばウチもここまではやらないと」と、良い刺激になりますから、こういう傾向が続くといいなと思います。
自分みたいな立場の人間も、取材が楽しくなりますしね。
この調子で、いずれはこの連載でぜひ任天堂タイトルを取り上げられれば本望です(笑)
西川善司の3Dゲームファンのための「METAL GEAR SOLID 4」グラフィックス講座
職人芸的最適化術によって生まれたPS3最高峰グラフィックスの秘密に迫る(前編)
http://game.watch.impress.co.jp/docs/20081203/3dmg4.htm
PS3ではHDRレンダリングの実装を考えたときに、FP16-64ビットバッファを使いたくてもアンチエイリアスが適用できない制限が効いてきて、MGS4のようにint8-32ビットバッファでの疑似HDR実装になる例が結構あるようです
PS3のRSXはNVIDIA GeForce6000/7000をベースにした設計なので、この制限も継承されてしまっているんですね(ちなみにこの制約は次のGeForce8000では解消されています)。
この制約については各所で対策が研究されていて、VALVEの「ハーフライフ2」ではレンダーターゲットをFP16-64ビットバッファに使いながらアンチエイリアスを適用させるユニークな妥協案を実装していました。
それについては、去年毎日コミュニケーションズに書いた記事で紹介しているので興味のある人はそちらを参考にして欲しいのですが、簡単にいうと、FP16-64ビットのHDRテクスチャ、HDRバッファは利用しつつも、パイプライン前段でトーンマッピングを行ってint8-32ビットのLDRに変換してしまうという方法でした。
毎日コミュニケーションズ
進化するHalf-Life 2エンジン(後編)
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/01/01/hl22/menu.html
さて。
話をMGS4に戻すと、MGS4のグラフィックスで凄いのはモーションの数の多さですね。主人公スネークだけで1700モーションは凄すぎます。
記事にはしていませんが、武器の取り扱いアクションについても武器の機種ごとに異なるモーションを取得したんだとか。
多分一回の通してのプレイでは、スネークのアクションの半分も見てないのかもしれません。
欧米のゲームは「ゲーム世界の作り込み」に集中しますが、対する日本のゲームはこのMGS4のようにキャラクタ描写とキャラクタ演出に集中する傾向があるように思えます。キャラクタ表現に注力する制作スタイルは、そういえば映画やアニメもそうですね。
欧米ゲームは、元々コンピュータゲームがコンピュータサイエンスを起源としている関係からか、ゲーム世界をシミュレーション的に実装してリアルに表現したいという意志を感じます。
そして、こうした傾向の違いこそがゲームをプレイしたときの味わいの違いにもなっているんではないでしょうか
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