パシフィコ横浜で開催されていたSIGGRAPH ASIA 2009に参加していたため、先週はとても多忙でした。
入稿していた記事がポツポツと掲載され始めています。
まずはNVIDIAのDavid Kirk博士の基調講演から。
SIGGRAPH ASIA 2009 - NVIDIA、David Kirk基調講演「なぜGPGPUが台頭したか」
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/12/21/siggraph01/index.html
「データパラレルコンピューティングがこれからとても重要になってくる」と言うこと、「それにはCUDAが素晴らしいよ」…というフォーマット・トークから始まったのは予想の範囲内でしたが、いくつかNVIDIAの今後の戦略方針のようなものも垣間見られました。
まず、レイトレーシングに力を入れていくというメッセージ。
NVIDIAは「Gelato」というオフラインレンダリングソリューションがありましたが、これを事実上のディスコン扱いとし、今年提唱した「OptiX」というプログラマブルレイトレーシングプラットフォームへと移行させます。
このOptiXについては以前詳しい記事を書いているので詳細は
そちらをどうぞ。
NVIDIA関係者からの情報によれば、来年出ると言われているFermiベースのGeForceの、さらに次の世代のGPUでは、OptiXを劇的にアクセラレーションさせる仕組みが導入されるのだとか。
NVIDIA、結構、レイトレに本気みたい。
こうしたロードマップを想定してかKirk氏はハイブリッドレンダリングが積極的に導入されるべきだ…というような見解を示しました。
Kirk氏がサンプルとして示したのは画面座標系のポストプロセスとしてのフォトンマッピングでした。
まぁ、これが主流になるかはともかくとして、「ソニックワールドアドベンチャー」「バイオハザード5」などのように、現在は静的な光源についてはGIを事前計算して動的なシーンに盛り込んでいく手法が一般化したので、この次のステップとして「局所的なレイトレーシングを行ってのリアルタイムGIがくるかも?」という予見はまずまずリアリティの高い話だとはいえます。
この局所レイトレーシングは、たしかにピクセルシェーダーでやるのはつらいので「GPGPUでやってみてはどうか?」というのがKirk氏の訴えというわけです。
傍観者的な立場でいわせてもらうと、ピクセルシェーダに再帰的な仕組みを許容するか、あるいは局所的なレイトレーシングを支援する別なプログラマブルシェーダを新設することでも同様なことは出来そうな気がします。
GPUとGPGPUのコンテクストスイッチのオーバーヘッドは結構大きいので、GPUモードにこだわるのであれば…という仮定の下での話です。
ただ、これ以上、現行のグラフィックスパイプラインを複雑怪奇にすることには反対意見も多いでしょうからそれも難しいんでしょうが…。
Comments
マイコミの記事、とても面白いですね!
3DCGの、止まるところを知らないエネルギーに、
とてもワクワクしてきます。
私が思うに、nVIDIAのKirk氏が主張するのは、
「そもそも、何のためにリッチなグラフィックスが必要なんだい? インタラクティブな体験がしたいからだろう?」
そして、
「じゃあ、どうやったらインタラクティブな3DCGを作れるだろうか?」
そして、
「Fermi以前のGPUなら、シェーディングが正解。
でも、Fermiからはレイトレーシングこそ正解さ。」
といったところでしょうか?
さらに、こう主張しているのではないかと思いました。
「ハードウェアとの橋渡しのために(抽象化)、CUDAを用意したよ。」
そして、
「ソフトウェアクリエイターの皆さんは、CUDAでコーディングしてね。
ハードウェアはnVIDIAにお任せを。」
ってな感じなのかと。
テクニカルライター泣かせ、ですね。